午前二時十二分、通知端末が一斉に震えた。Web応答、PHP-FPM、DB接続、レプリカ遅延、外形監視。同じ障害から生まれた百件近いアラートが、別々の事件として夜勤室へ押し寄せた。
瀬名は通知チャネルそのものを止めようとした。律は首を振り、最初に発生した時刻だけを並べる。起点はDB接続プールの枯渇で、後続はすべて派生だった。通知を黙らせれば、本当に別の障害が起きても見えなくなる。
二人は親子関係を定義し、根本アラートが発生した間は派生通知を抑制した。継続中の情報は一定間隔の一件へ集約し、復旧通知には影響時間と未解消項目を含めた。
静かになった端末を前に、律は受信履歴をスクロールした。「多すぎる声は、全部を無視させます。でも、黙らせるだけでは守れない」
瀬名は、彼女が必要なことまで一人で抱え、限界の通知を出さない人だと気づいていた。けれど監視設定の比喩にして問い詰めるのはやめた。
「次から、判断が重いときは件数に関係なく呼んでください。私は抑制対象にしないで」
律は冗談に逃げず、「分かりました」と答えた。その短い返事は、この夜いちばん重要な復旧通知だった。
人物紹介
瀬名悠真
- 男性、30代
- サーバ運用・インフラ担当
- 手は動くが、初動で少し焦りやすい
久坂律
- 女性、30代
- 監視、自動化、ログ解析、運用設計に強い
- 冷静で、原因調査の順序を大事にする

