脆弱性スキャンが重大判定を出した。対象は画像処理ライブラリで、細工された入力から任意コード実行の恐れがある。瀬名は即時更新を提案し、律はまず利用箇所と公開範囲を確認した。
該当ライブラリは管理者だけが使う夜間変換処理にあり、外部から直接入力を受けない。ただしアップロード済みファイルを処理するため、攻撃経路がゼロとは言えない。二人は変換バッチを一時停止し、アップロードを隔離領域で検査する暫定策を入れた。
修正版を検証環境へ適用すると、古い画像形式の一部が読めなくなった。互換性問題を記録し、変換ツールを先に更新したうえで回帰試験を行う。本番投入は翌朝の承認枠へ送り、緊急度と準備不足を混同しなかった。
「急ぐことと慌てることは違う」と律が変更票に書いた。それは以前の自分へ向けた文にも見えた。
瀬名は試験結果へ署名した。「過去の判断も、今の基準だけで裁かず、当時見えていた情報を確認しましょう」
「それでも私の操作は間違いでした」
「はい。間違いと、全部を一人の人格にすることは別です」
律はしばらく黙り、封筒の口を初めて開いた。
人物紹介
瀬名悠真
- 男性、30代
- サーバ運用・インフラ担当
- 手は動くが、初動で少し焦りやすい
久坂律
- 女性、30代
- 監視、自動化、ログ解析、運用設計に強い
- 冷静で、原因調査の順序を大事にする
