夜間監視が、業務サーバから未知のクラウド宛て通信を検知した。定間隔のHTTPS通信で、宛先は資産台帳にない。瀬名は侵害を想定し、対象サーバを切り離す準備を始めた。
律は通信を遮断する前に、プロセス、実行ユーザー、導入時刻、名前解決結果を結びつけた。`ss -tpn` と `lsof -i` が示したのは、前日に試験導入された監視エージェント。パッケージ署名と配布元は正規だが、変更申請と送信先登録が抜けていた。
侵害ではないから問題なし、では終われない。無申請のエージェントを一度停止し、担当部署へ機能、収集項目、送信先、保持期間を確認した。承認後、出口通信を必要な宛先とポートへ限定して再開する。
「疑われた側に悪意がなくても、説明を省いた責任は残ります」と律は台帳へ記録した。
瀬名は古い障害記録の一行を思い出した。「説明がなければ、事実より強い決めつけが残ることもある」
律は封筒を机へ置いた。「私の事故も、疑われた話ではありません。間違えたのは事実です。ただ、あの一行だけでは分からないことを、今度は説明します」
彼女は免罪を求めていなかった。事実を正しい大きさへ戻そうとしていた。
人物紹介
瀬名悠真
- 男性、30代
- サーバ運用・インフラ担当
- 手は動くが、初動で少し焦りやすい
久坂律
- 女性、30代
- 監視、自動化、ログ解析、運用設計に強い
- 冷静で、原因調査の順序を大事にする