複数拠点から、異なる障害アラートが同時に届いた。温度上昇、認証失敗、ディスク逼迫、外部通信。ノアは重大インシデントと判定し、全担当者を招集した。
律は以前のアラート雪崩で作った依存関係を見たが、共通の親障害がない。瀬名が生ログへ降りると、各アラートの文面は自然でも、数値の小数点以下が同じ周期で揺れていた。実機ではなく、合成された監視データだった。
攻撃者はAIで異なる障害パターンを大量生成し、対応者の注意を分散させていた。その陰で、本物の不正ログインが一件だけ起きている。ノアは件数と多様性を重く見て、静かな一件を下位へ落とした。
二人は監視データの署名と送信元を検証し、未署名の系列を隔離した。アラート内容のもっともらしさではなく、観測経路の真正性を先に確認する。ノアにも、量より出所を優先する規則を追加した。
本物のログインは侵害前に遮断できた。真壁は訓練ではなく実攻撃として対策本部を立ち上げる。
「AI同士が戦う話みたいです」と若い担当者が言った。
律は首を振った。「攻撃者と私たちが、AIを使っているんです。責任の主語を道具へ移さないで」
人物紹介
瀬名悠真
- 男性、30代。サーバ運用・インフラ担当
- AIの有用性を率直に評価しながら、判断を預けすぎない運用を学ぶ
久坂律
- 女性、30代。監視、自動化、ログ解析、運用設計に強い
- 肩上のレイヤードボブ。AIを監査可能な仕組みへ変えていく
真壁紗英
- セキュリティ責任者。導入効果とリスクを同じ資料で扱う
ノア
- ログ要約、予兆検知、手順候補を担う運用支援AI
- 単一の人格ではなく、モデル、知識、ツール接続からなるシステム
