SSH認証失敗が一時間で数千件に達した。パスワード認証は無効で、侵入の形跡もない。それでもログは攻撃元のアドレスで埋まり、本来見たい保守作業の記録が流されていた。
瀬名はSSHポートを変える案を出した。律は、それだけでは攻撃を止める対策にならないと指摘し、`journalctl -u sshd`、`lastb`、成功ログイン、公開鍵の登録状況を順に確認した。まず侵害の有無を判断し、次に騒音を減らす。
二人はfail2banを導入し、短時間の反復失敗だけを一時遮断する設定にした。管理拠点を無条件で信用せず、緊急時の解除手順と自分たちを締め出した場合のコンソール経路も確認する。許可ユーザーを絞り、rootの直接ログインは禁止のまま維持した。
設定後も、扉を叩く試行は消えなかった。ただ、閾値を越えた相手は遮断され、夜勤室へ届く通知は判断できる量になった。
「入れないと分かっていても、叩かれ続けると疲れますね」と律が言った。
瀬名は彼女の過去へ話を寄せず、交代でログを見る時間を決めた。「扉を守る当番まで、一人で続ける必要はありません」
律は端末を彼の側へ少し寄せた。信頼は鍵を渡すことではなく、鍵を管理する手順を共有することなのだと思えた。
人物紹介
瀬名悠真
- 男性、30代
- サーバ運用・インフラ担当
- 手は動くが、初動で少し焦りやすい
久坂律
- 女性、30代
- 監視、自動化、ログ解析、運用設計に強い
- 冷静で、原因調査の順序を大事にする

