廃止直前の旧Webサーバに、まだ毎日数百件のアクセスがあった。DNSは新環境へ移行済みだが、過去記事の絶対URLと外部サイトの埋め込みが、古い画像を直接参照している。
瀬名はアクセスログから参照元と対象ファイルを一覧化し、律は新環境へない画像をハッシュで照合した。単純に電源を落とせば、古い記事の一部が静かに欠ける。URL置換、リダイレクト、一定期間の警告ログを経てから、最終的に410を返す段階計画を作った。
バックアップ対象を確認していると、旧サーバの管理領域から七年前の復元試験資料が見つかった。律が持ってきた封筒と同じ障害番号。作業前のチャット、承認依頼、容量不足の警告、当時の手順書が残っている。
記録によれば、律は復元先の確認を誤り、本番の一部テーブルを上書きした。それは事実だった。一方、夜間担当が一人だけで、承認者は応答せず、バックアップ検証環境もなく、手順書には対象確認も切り戻し条件もなかった。
失われたデータは六時間分。翌朝のバックアップと手作業で大半は復旧したが、完全には戻らなかった。報告書は再発防止より個人の逸脱を強調し、律が提出した振り返りは添付されていなかった。
律はその文書を見て、付箋を剥がした。「忘れたかったんじゃなくて、正しく覚えたかったんだと思います」
二人は旧サーバの資料を証拠として保全し、廃止手順を完了させた。過去の機械は止めても、必要な記録は次の仕組みへ移せる。
人物紹介
瀬名悠真
- 男性、30代
- サーバ運用・インフラ担当
- 手は動くが、初動で少し焦りやすい
久坂律
- 女性、30代
- 監視、自動化、ログ解析、運用設計に強い
- 冷静で、原因調査の順序を大事にする
