攻撃者がAI関連の経路を利用していると判断し、真壁はノアと連携基盤の全面隔離を決めた。ログ要約、自動チケット、予兆検知、自動復旧。便利になった機能が一夜で消えた。
直後に、本物の障害が起きた。認証サービスの証明書更新に失敗し、一部利用者がログインできない。偽アラートの可能性もあるが、外形監視と利用者報告が一致している。
瀬名は手動の指揮を執り、律が時系列をホワイトボードへ書いた。若い担当者がログを分担し、真壁が対外連絡を担う。ノアなら十秒で要約する情報を、人間は声に出してつないだ。
原因は更新用アカウントの権限変更だった。攻撃者の操作ではなく、隔離作業で古い連携を止めた影響。二人は証明書を安全な経路で更新し、段階的に認証を戻した。
復旧には二時間かかった。以前より遅い。それでも誤った自動操作はなく、誰が何を確認したか記録されている。
「ノアがなくてもできましたね」と瀬名が言う。
律は疲れた顔で笑った。「できます。でも、あったほうが助かる。だから今度は、なくても立てる状態で使いましょう」
夜明け前、二人は屋上へ出た。端末を持たずに見る街は静かで、どの灯りもアラートには見えなかった。
人物紹介
瀬名悠真
- 男性、30代。サーバ運用・インフラ担当
- AIの有用性を率直に評価しながら、判断を預けすぎない運用を学ぶ
久坂律
- 女性、30代。監視、自動化、ログ解析、運用設計に強い
- 肩上のレイヤードボブ。AIを監査可能な仕組みへ変えていく
真壁紗英
- セキュリティ責任者。導入効果とリスクを同じ資料で扱う
ノア
- ログ要約、予兆検知、手順候補を担う運用支援AI
- 単一の人格ではなく、モデル、知識、ツール接続からなるシステム

